インタビュー
幅広い事業を展開し、革新的な製品を提供する川崎重工業様に、 弊社製品を導入されたきっかけと使用感を伺いました。
- 川崎重工業 株式会社
- 航空宇宙システムカンパニー 航空エンジンディビジョン エンジンQM総括部 エンジン品質保証部 エンジン品証技術課 基幹職
市川 善浩 様 - 創業者の川崎正蔵が明治11 年に東京・築地に川崎築地造船所を開設したことを起源として、明治29年10月に設立。航空機やジェットエンジンはもちろん人工衛星まで手掛ける航空宇宙事業、造船事業、鉄道車両事業、エネルギー・環境関連システム事業、油圧機器や産業用ロボット等の各種産業機械事業、モーターサイクルやジェットスキー®等のレジャー製品等、”Kawasaki”ブランドのもと幅広い事業を展開し世界に製品を送り出している。
- 東京本社:〒105-8315 東京都港区海岸1丁目14番5号
神戸本社:〒650-8680 兵庫県神戸市中央区東川崎町1丁目1 番3号(神戸クリスタルタワー)
明石工場:〒673-8666 兵庫県明石市川崎町1番1号
西神工場:〒651-2271 兵庫県神戸市西区高塚台2丁目8番1号
http://www.khi.co.jp/
市川様の業務内容についてお聞かせください。
私たちは航空機エンジン部品の品質がより信頼性の高いものになるよう、技術的観点から製品検査における測定システムの解析や評価を実施し、製品寸法の妥当性検証や高精度化・品質安定化に向けた改善などを行っています。また、昨今品質に対する顧客要求もさらに厳しくなっており、それを満足すべく適切に対応することも私たちの仕事の一つです。 今年は、コロナ禍の影響で需要が落ち着いていることもあり、これをチャンスと捉え、現状の品質レベルに対しより高度なレベルを目指して様々な活動を行っています。それには測定技術のイノベーションが不可欠で、御社には測定器メーカーとして永年蓄積したノウハウと実績を元に色々と技術課題の解決に取り組んでいただいています。
東京精密のブリスク測定機を導入していただいたきっかけは何でしょうか。
三次元座標測定機の選定の際には、少なくとも技術的な要求を満足していなければなりません。時には既存の測定技術に加え、将来を見据えたニーズを満たす新技術が必要となります。ブリスク測定では既存技術での対応が難しく、弊社が求めるものを共に創り上げていくパートナーを探しておりました。そこで、我々の期待に応えてくれたのが御社でした。 これまでブリスクなど倣い測定が必要なものは、多くの測定時間がかかっていました。そのため、測定の高速化により測定時間を半減し生産性を向上させる、設備投資の抑制や設備エリアの削減にも寄与する、もちろん要求精度も満足する測定機が望まれていました。それには非接触測定が有力候補になりますが、狭い翼間を縫って高速かつ高精度に測定できる非接触式三次元座標測定機はどのメーカーにも満足のいくものがありませんでした。そこで、我々のニーズを汲んだ測定機をメーカーと共に創り上げていこうとしましたが、国内ではなかなか見つけられず、御社が名乗りを上げてくださったことに感謝しております。
実際にブリスク測定機を導入されて、使用感はいかがですか。
導入前の期待として、ベースとなる測定機本体然り、新規開発の非接触センサーの精度が優れているだけでなく、特に着目した点は測定のぱらつきの少なさでした。実際に導入後の測定評価では期待通りにばらつきが少なく満足しています。 さらに、幾つか副次的効果もありました。例えば、精度向上により信頼性が高まり、測定のばらつきが少なくなれば、測定が安定し測り直す必要が減ります。また不具合が発生した際にも原因分析がしやすくなります。測定結果には測定のばらつきと製品のばらつきが混在して現れるため、通常はどちらが起因しているかを特定することから始めなければなりませんが、測定のばらつきをあまり意識せず原因分析が進められます。
今後、どのような測定機器が欲しいとお考えですか。
これまでの接触式三次元座標測定機では苦手としている測定があります。例えば、微小な円弧や段差などがそうです。通常、このような測定には形状測定機を用いていますが、大きな製品ですとレプリカを取って測定する必要があり、検査員の工数が多くかかっています。 今後はそこを非接触式三次元座標測定機で賄えないかと考えています。接触式と違い、非接触式であれば高速で三次元表面形状の点群データを取り込むことができ、そのデータから意図する箇所を容易に評価できます。非接触式三次元座標測定機により形状測定が可能となれば、格段に工数削減が実現できます。また、狙った箇所が測りにくい、人によってばらつく、という課題も解決できます。これは表面粗さ測定でも同じことです。 しかし、以前の非接触式の多くは、金属光沢に弱く測定不安定で、精度もあまり良くありませんでしたが、昨今の技術進歩により解決の兆しが見えており、実用的な非接触式三次元座標測定機のリリースが待ち望まれます。
東京精密に期待することはありますか。
長期的に見て、人財の確保がとても厳しくなっています。検査員は、長い教育期間を経て検査員としての適性および力量を身につけ資格認定を受けなければならないため、簡単には増やせません。一方、将来の航空機需要の増加を考えると、検査の自動化や品質の安定化が求められています。そこで御社には、設備単体サービスに留まらず、段取りの自動化や加工機との連携などトータルソリューションサービスを期待しています。また、今回のようにお互いに研鑽し測定分野の魁となって”ミライ”を切り拓いていけたらと考えています。
東京精密より、対談を終えて
着々と変化していく時流の先を捉え、変わることを恐れずに変革していきたいと語った市川様。世界規模の苦境を好機に変換するため、たゆまず考え、行動するという姿勢が現在までの発展に繋がっているのだと感銘を受けました。今後もそんな川崎重工業様の製品づくりに貢献できるよう、東京精密も進化し続けて参ります。